腰の症例

【症例(腰部編)①】~腰に何かが乗っているような重い感覚

患者

女性30代

 

来院

2015年6月

 

症状

 子供を追いかけようと走り出した際に腰に痛みを感じた。翌日には強い痛みは無くなったが何かが乗っているような重い感覚が残り、その異和感がなかなか取れない。便秘が続くと腰の重さが増す。マッサージや整体に行ってみたが効果が持続せず現在に至っている。当院へ通うママ友から紹介され来院。

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治療内容と経過

 腰から骨盤を構成する仙骨と言われる部分にかけて重だるい症状があり、腰部から臀部にかけての張りも強い。当院へ来院されるまで受傷後既に1か月が経過している。問診で1年前に子宮筋腫の摘出手術を受けたことを聞き、腹部を確認すると臍下約10㎝にわたり縫合線があることを確認した。腹部を触診してみると周辺の皮膚も引きつれ、筋肉も固くなっている。

 

東洋医学的な見解として手術により縫合線が残るとそこに血の滞りが発生し腰痛の原因になることがある。今回の腰痛はこの血の滞りが大きな要因と考え、縫合線部の気血の流れを良くするための鍼治療を行った。他、臀部・足の筋肉の張りを緩め、腰部の重さが半分以下になった為、一回目の治療を終了。治療後、帰宅直後に排便があり、腰部の張りがさらに軽減した。

 2回目来院時の症状は前回の帰宅時に比べさらに半分以下。治療の効果がみられていたため腹部の血を取ることを中心に前回と同様の治療を行う。

 その後、計5回の治療を行った。症状はゆっくりではあるが徐々に緩解し日常生活ではほとんど気にならなくなった為治療を終了した。

 

 使用したツボ

 中封 / 尺沢 / 縫合線周囲 / 環跳 / 承山 / 昆崙

 

 

 考察

 今回の症例は腹部に縫合線がある事、また術後からそれまで無かった便秘に悩まされるようになった事。この点から血の流れが滞った血状態にあったといえるでしょう。腰痛と関連付けることで速やかに治療法を選択できたと言えます。子宮筋腫の既往からみても、血の滞りができやすい事が分かります。血はあらゆる疾患を招く為、今後も十分注意していただくよう食養生などを含めて生活指導をいたしました。

 

 

【症例(腰部編)②】~整形外科では手術を勧められたが・・

 

患者

女性70代

来院

2016年4月

 

 

症状

 整形外科にて脊柱管狭窄症と診断される。歩き出してから数十メーターで右の臀部から太ももの裏にかけて針で刺されるような痛みと同時にしびれる感覚がある。医師からは完治するには手術しかないと言われているが、以前に友人が脊柱管狭窄症の手術を受けるも症状が改善されなかった為に、手術は踏み留まっている。周囲に相談していたところ鍼灸院へ通う知人に勧められ来院。

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治療内容と経過

 今回の疾患は骨の変形が脊柱管を狭くしているものであり、変形した骨を鍼灸で治すことはできない。しかし東洋医学では患部だけにフォーカスした治療は行わない為、腹部を含む腰から下の筋緊張を取ることを重点に治療ポイントを置くことで回復を促すことができる。

 実際に触診したところ足のスネ・太ももの前面、背部、腰部、臀部の張りがかなり強かった。前かがみにより症状が軽減するため、日頃から前傾姿勢を取ることが多いからであろう。また腹部(左測著名)の固さも顕著であり、押すと身体が逃げるほど痛みを感じる。

  まず足のしびれを取りために足と腕のツボを使い腹部の固さを緩めた。直後からしびれが徐々に取れていった。臀部から下の筋緊張を鍼で緩め1回目の治療を終える。帰宅時は自宅までの10分の道のりをゆっくりではあるが休まず歩けたという。初診の来院から数日後、足のしびれが再び現れる。初診から1週間後の来院では前回と同様の治療を行う。

 3回目(1週間後)の来院では腰痛が軽減、腹部の痛みもかなり取れていた。

 4回目(1週間後)には腹部と臀部の固さも緩み、最近は足のしびれが出ない日が増えている。同時に歩行距離が伸び、整形外科に再受診した際には、医師から手術の必要はないと言われた。当院での治療も一旦終了とし様子を見るに至った。

 

使用したツボ

中封 / 尺沢 / 陽陵泉 / 環跳 / 百会 / 湧泉(灸)

 

考察

 もともと便秘がありタバコを吸うと便通が良くなるからと常用していたようです。タバコは血の巡りを悪くするため血流が滞り瘀血状態であったといえます。このようなケースでは過去の経験から左腹部に強い固さと痛みを伴うことが多く、緩めることで神経痛の改善が見込めます。年齢から考え通常は症状が回復するまでに時間がかかりますが、今回は平均よりも速く回復したケースです。

 

 

 

 

 

【症例(腰部編)③】~立ち上がった瞬間にズキッ!

 

患者

性50代

  

来院

2016年7月

 

 症状

会社でデスクワークを一日中行い、帰宅しようと会社の椅子から立ち上がろうとした瞬間、腰にズキンとした痛みを感じた。動けるが腰を真っすぐに伸ばすことが出来ない。何とか帰宅し冷シップを貼り就寝。翌朝、痛みが増しており不安になったため当院へ来院。1週間後に海外出張で長時間飛行機に乗らなくてはならず、それまでに何とかしたい。

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治療内容と経過

  問診では職場の部屋が冷房でかなり冷えていたことを確認。寒いと感じていたが我慢していたという。実際に舌診、脈診でも身体に冷えが入っていることが確認できた為、治療はとにかく冷えを身体から取り去ることに絞った。

ベッドに仰向けになってもらったが、その動作でさえかなり辛そうである。治療は足首の灸を行った。20壮ほどでやっと灸の熱さを感じてくる。冷えが相当強いことが分かる。しかし本人には冷えている実感が一切ない。

 

動作時痛を確認しながら灸治療を繰り返し、痛みが半分以下に軽減したため1日目の治療を終了した。身体を冷やすと症状の悪化を招く為、自宅では風呂に浸かり患部を温めるよう指導した。

翌日2回目の来院。昨日より歩行することが容易になる。痛みは初診時の半分。しゃがむ動作や寝返り時に痛みを伴う。

3回目(初診から3日後)の来院では痛みはあと2割。痛みがズキンとした感覚から重だるいような鈍痛に変化。鍼治療、温灸器にて腰部・背部・臀部の筋肉を加温し重だるさを取る。

 

使用したツボ

三陰交 / 胞膏 / 秩辺 / 委中 

 

考察

 本症は冷房の冷えが急激に身体へ侵入し、血の滞り((おけつ))を起こしたことで発生したといえます。東洋医学ではこの疾患を「寒凝血(かんぎょうけつお)」による腰痛と判断します。ぎっくり腰になるととりあえず“冷やす”と考えがちですが、冷えが原因で起きた腰痛の場合さらに冷やすことで症状の悪化招く恐れがあります。夏には本症例のような腰痛が頻発しますが、意外にも男性に多くみられます。

 女性に比べ冷えに対して鈍感であり、気づかないうちに冷房や冷たい物の摂り過ぎなどで身体冷やしている傾向にあるようです。本人は暑いと感じていますが実は身体の芯が冷え切っている場合が多いのです。男性も夏冷えには十分注意していただきたいものです。